こんにちは、塾長の”nobi先生”です。
今回は「主体的な学びが身につくまで」について書いてみようと思います。
1.質的な変化
「好奇心を起点に、主体的に学び、深める」についてですが、これは一種の「技術」であり、「鍛錬と経験」が必要です。
前々回の「セレンディピティー」のコラムでも少し触れましたが、どんなに好奇心が旺盛であったとしても「気づく」ことは簡単ではありません。ものごとの因果関係や原理原則といった知識を「視点・着眼点(問い)」として活用し、ナイフのように切り込んでいく事で、初めて「気づく」ことができます。このナイフ(問い)の使い方こそが「技術」であるという訳です。
未知なものに対して最適に切り込むには、手ほどきをうけつつ(習う)、実践を交え、それ相応のステップを踏みながら習得していくといった「鍛錬と経験」が必要となります。技術(能力)が備わっていない未熟(子ども)な状態で「主体的に学びなさい(完成形)」と求めても、それは到底無理な話であって幻想でしかない訳です。
また「疑問を持つ・問う・気づく」という一連の事象は、今までの自分の範疇(常識)を超えるという行為ですので、量的な成長だけでなく『質的な成長』を伴う必要があります。(※自分の常識の範疇であれば疑問に思わず「当たり前」だと認識するので「なるほど!」というような感動も生まれてきません。)
『自分の範疇(常識)を超える』、ここが重要なポイントです。
お子様自身が「好き」「楽しい」「やる気」があるものだけで日常を構成すると、延長線上である量的な成長は見込めても、範疇を飛び越えなければ手に入らない「質的な変化(成長)」を促すことは出来ません。
主体的に学び楽しむ技術を習得するまでの未熟な時期においては、「今時点」ではあまり面白味を感じないもの、やる気が出ないものにも、『他人の助言を得つつ』、長期的な視野から、少し我慢して取り組むことが欠かせません。
2.主体的どころか、受け身が定着
次に、「今時点」の部分について、もう少し詳しくご説明します。
元々、好奇心旺盛なお子様は多いのですが、助けを借りずに自分だけで深められることには限界があります。(※注意:ここで親や先生が先回りして答えを与えてしまう詰め込み暗記型教育が主流になっている。受け身型の学習が定着してしまう。)
ですので、限界点に達すると
- すぐ満足する
- すぐ飽きる
- やる気(自信)が無くなる
- こだわりが無くなる
- 興味が薄くなる
- 面白くなくなる
といった症状があらわれてきます。
そして徐々に刺激の強いもの、分かり易いものにしか満足できないようになり、何事に対しても「受け身」な姿勢が身についてしまいます。(※大人になってから姿勢を変えるのは難しいので、ここで受け身な姿勢が定着してしまうのが懸念される部分です。)
こうなると、質的な成長が無くなるだけでなく、量的な成長すら停滞していきます。
ですので(質的な成長を促すには)そうなってしまう前に、お子様を孤立させることなく(外からの力も借りつつ)限界点を一緒になって突破してあげることに集中していけば良いのです。
今時点で「面白くない」と感じていたことも、助けを借りて粘り強く鍛錬し「気づく技術」が上がるにつれ、少しずつ「面白い」と感じることが増えていくのです。
まとめますと、
「何も気になることがない事象にも、ある視点で分解していけば発見がある」という疑似的な経験を繰り返し、「どういう視点で物事を見ていけば新たな発見につながるのか」を徐々に掴んでいく。
このような鍛錬から「物事を深く見ていく技術」を習得していくことで、ようやく、「自ら面白さを作り出すといった主体的な学び」ができるようになって行きます。いきなり「主体的な学び(完成形)」を求めてしまうのではなく、根気強く伴走しつつ導いてあげることが大切なのです。
3.幻想に惑わされずリアルな成長曲線をイメージする
「成長は変化」であり、「習うは直す」でもあります。
習ったことを自分で咀嚼しながら、少しずつ直していくことが質的な変化につながる訳ですが、「直す」とは言い換えると「改める」ということであります。
つまり、自分の常識を変化(更新)させなくてはいけませんので、人間誰しも「葛藤・逃避」が生じてしまいます。(※成長には素直さが大事、プライドは邪魔と言われる理由もここにあります。)
子どもながらに葛藤と対峙しながら決断を下していく訳ですので、その変化成長の軌跡は右肩上がりの一直線(幻想)ではなく、まるで芋虫が蛹を経て蝶に成長するように有機的でものすごく生命的な曲線になるのです。
幼虫期にはたっぷりと餌を食べ体を大きくし、来たるべき時のためにエネルギーを蓄えます。そして、外からは変化の見えない蛹期にも内部では爆発的な変化が起きているのです。そして、その時を経て美しい蝶へと羽化するのです。
量的な変化は数値や点数などで可視化できますが、例え内部では爆発的に変化していたとしても、質的な変化を直接的に可視化することはできません。
だからこそ、見る側(親や先生)には、洞察力を発動させ、ステップを踏んでサポートしていく必要があるのです。
「言うは易く行なうは難し」で、質的な変化を伴う学習を軌道に乗せるのは簡単ではありません。(※私も日々、大変苦労しつつ指導を頑張っております。)
〜関連コラム〜
植物とイモムシから学ぶ 子供期間の過ごし方
4.主体性を身につけてもらう指導のコツ
「のびてく」の実例を少しお話ししますと、日常の何気ないテーマを通して、先ずは「Zoom対面レッスン(セッション)」の中でナイフの使い方(着眼点やメカニズム理解)を指南していきます。そして、メカニズムや因果関係を解き明かすことを一緒に楽しみます。
お子様の答え方などから、瞬時に思考の傾向などを分析し、何でもないような会話を続けて行きますので、他者からは指導を行なっているようには見えなかったり、意図・意味が不明なことも多いと思います。
探究学習は表半分であって、残りの裏半分は子どもたちのものの捉え方、考え方といった根本的な部分(本質)にアプローチしていくことにあります。(※世間一般にはない特殊な指導を行なっております。)
お子様の姿勢・家庭学習・習い事…etc、入塾時の状態にも左右されますが、初期はレッスン以外の時間では熱中することもなく、主体的にバリバリと調べ学習を進めたり、成果物にまとめたり、といったことがスムーズにできる訳ではありません。(※右肩上がりの一直線ではない)
それでもレッスン中に少し発見があったり、少しでも楽しかったり、なるほど!と思えたりするならば、それは非常に順調(質的な変化の兆候)と捉えて頂きたいと思います。
面白いことに(私としては当然ではありますが)、根本にアプローチを仕掛けて行きますので、他の習い事や日常の態度全てにその学習効果(成長)が波及して行きます。鍛錬努力することを楽しんだり、好きになったり、分からないことから逃げなくなっていきます。
ですので、いずれは応用力も身につき、やったことがない事象であっても比較的短期間でマスターできたりするようになっていきます。(※ここまで来ると、他人からは理解不能になっていきます。)
このように適切なステップを踏むことによって、自信と実力が身につき、主体的に学ぶことができるようになるのです。
それでは今回はここまで。