スローラーニングとは
好奇心を起点にじっくり学び、深い理解につなげて行く学習法です。
自分で考え、分からなかったものを段々と分かっていくという過程を楽しみます。
知識習得を優先する早期教育とは対極にある学習方法です。
Slow Learning 学習の流れ
- 好奇心を起点に疑問をめぐらせます。
- 頭と身体を使って実体験し感性を磨きます。
- 根気強く調べ言葉を深く理解します。
- 自分で考えることで思考力や判断力が身につきます。
- まとめたり表現したりして自分に自信をつけます。
スローラーニングの哲学
のびてくが提唱する「スローラーニング」では、探究学習を中心としたアクティグラーニング形式で、子供たちの知性(クリエイティビティーや非認知能力)を伸ばしていきます。
ただし、一般的な探究学習とは違い、「スロー(じっくり)」にこだわっている点が特長であり、それには理由があります。
ここで、少し考えていただきたいことがあります。
【事例】
幼少期にサイエンス、電子工作、ロボット製作、プログラミング、アート、音楽などのワークショップに参加した子供たちは一様に「楽しかった」と笑顔で言います。ところが、大人になってもその楽しかった道を追究し続けたり、大好きな趣味とし続けている子供たちは僅かしかいません。それは何故なのでしょうか。
【考察】
原因はいくつか考えられますが、「①与えられた表面的な楽しさでは好奇心や感性が豊かに育たなかったこと」と「②立ちはだかる壁を超えられなかったこと」という2つが主原因ではないでしょうか。どんな分野であっても「必要な能力を身につけ、自分でやり抜いていく楽しさ(楽しむ力)」に上手く移行していく必要があると考えられます。
このことを踏まえて、スローラーニングであるべき理由について順を追って説明していきます。
①豊かな感性を育む(小さな差異に気づく)
探究学習やアクティブラーニングは有効ですが、表面的な学習形式だけをなぞっても子供たちの成長は期待できません。
私どもの長年の研究と多方面の経験から「知性は感性の先にある」と考えています。
知性とは
答えのない問いの答えを探し続ける能力であり、思考力、判断力のこと。
※ここではクリエイティビティーや非認知能力とも同義語とする。
感性とは
物事を心に深く感じ取る働き。見たり聞いたりしたことから想像力を膨らませること。
子供たちを成長させるKFS/CSF(重要成功要因)はここだと捉えています。(※教育方法に唯一の正解はないとしても、成功要因を絞り込むことはできると考えています。)
よって、どんな形式で、どんな学習をすすめるにしても、指導者(講師)が子供たちの内面(好奇心・感性)の成長に敏感になり、適切に刺激し、導いていくことが最重要だと思っています。
そして、いま求めている感性の「豊かさ」とは、「きめ細かさ、多様さ」のことであり、「小さな差異に気づく力」と言い換えることができます。
ひとつの物事に対して、たった一方向の解釈では豊かとは呼べませんね。物事を色々な方向から見て・感じて・考えるには、それ相応の時間がたっぷりと必要です。
寄り道、回り道、遠回りなどの道草の時間と経験こそが豊かさの支えとなるのです。
つまり、豊かな感性を育むにはスロー(じっくり)であることが理にかなって自然なことなのです。
②自分で考える、自力で分かる、自ら楽しむ(学習プロセス)
人生において、ずっと良いことが続くことはありませんよね。きっと、いくら努力していたとしても良い時もあれば悪い時もあるはずです。
そして、この「悪い時」にどのような気持ちで、どのように切り抜けていくのかが大事だということで、非認知能力のひとつに「忍耐力、回復力、対応力(GRIT:やり抜く力)」が定義づけられているのだと思います。
こういう悪い状況において、焦らずに落ち着いてやり抜くには「自分で自分が信用できるかどうか」にかかっていると思います。
色々な状況で考え抜いた経験、苦労しつつも一つ一つ積み上げてきた経験、そういうものから本当の自信が生まれるはずです。
こういった「分からない状況」からスタートして、「自力で分かっていくプロセス」を経験し、「分かっていく方法」を習得すること。
殆どの場合、実際には大人や友人のサポートを受けながらなのだと思われますが、本人が「自力でやった」という認識と感覚を得ることが大切。
そういう経験を繰り返すと、楽観的な目処が立ち、どんな状況も挑戦できる、楽しめるタフさ手に入るでしょう。
また、その反対に注意したいのは、他人に丸投げしたり(頼り切ったり)、ハウツーや解説を見たり覚えたりしてるにも関わらず、浅はかに「分かったつもり」になり、成功に浸ること。これではいざ一人になったときに困ってしまいますね。
このように自力で分かっていく方法を習得するには失敗を含めた沢山の経験が必要であり、それにはスローであることが必要なのです。
スローラーニングはこれまでの教師主体の講義形式で、知識(暗記)を重視する教育方法とは対極にあり、生徒にも、親にも、講師にも、意識の刷新が必要になってきます。
また、IT革命(情報革命)以前は、子供たちに「せっかくの好奇心」があっても、必要な情報や環境に巡り会えず、諦めざるを得ないことが多くありました。
しかし、今はインターネットのおかげで、使い方さえ間違わなければ、ヒントや手がかりを得ることができる、非常に恵まれた環境にあります。上手に活用していきましょう!
それではスローにこだわる理由の説明が終わりましたので、次はスローラーニングのメカニズムについて、更に踏み込んで解説していきます。