1.スローラーニングとは
スローラーニングとは
教育先進国の北欧フィンランドなどで行われている教育法と同じく、「なぜ?」「どうして?」と子どもたちが自分の頭でじっくり(スロー)考えることを中心とした新しい学習方法です。偏差値時代の終幕をむかえる日本の子どもたちに必要な学習方法です。
従来の暗記中心の科目学習とは違い、「算数、国語、理科、社会」のコア部分だけを抽出し、実体験を通して学びをスタートさせ、探究的なアプローチを通してじっくりと理解を深め・広げ・つなげて行きます。(リベラルアーツ教育)
上辺だけを暗記する従来の学習(ファストラーニング)に比べ、スローラーニングでは学習の進度は早くなり、深度は深まり、範囲は広がります。何でもスポンジのように吸収して伸び続ける人、主体的に楽しんで学びを継続させられる人、社会に目を向けられる人に育てます。
Slow Learning 学習の流れ
- 好奇心を起点に疑問をめぐらせます。
- 頭と身体を使って実体験し感性を磨きます。
- 根気強く調べ言葉を深く理解します。
- 自分で考えることで思考力や判断力が身につきます。
- まとめたり表現したりして自分に自信をつけます。
- 自分で考え、分からなかったものを段々と分かっていくという過程を楽しみます。
スローラーニングの哲学
のびてくが提唱する「スローラーニング」では、探究学習を中心としたアクティグラーニング形式で、子供たちの知性(クリエイティビティーや非認知能力)を伸ばしていきます。
ただし、一般的な探究学習とは違い、「スロー(じっくり)」にこだわっている点が特長であり、それには理由があります。
ここで、少し考えていただきたいことがあります。
【事例】
幼少期にサイエンス、電子工作、ロボット製作、プログラミング、アート、音楽などのワークショップに参加した子供たちは一様に「楽しかった」と笑顔で言います。ところが、大人になってもその楽しかった道を追究し続けたり、大好きな趣味とし続けている子供たちは僅かしかいません。それは何故なのでしょうか。
【考察】
原因はいくつか考えられますが、「①与えられた表面的な楽しさでは好奇心や感性が豊かに育たなかったこと」と「②立ちはだかる壁を超えられなかったこと」という2つが主原因ではないでしょうか。どんな分野であっても「必要な能力を身につけ、自分でやり抜いていく楽しさ(楽しむ力)」に上手く移行していく必要があると考えられます。
このことを踏まえて、スローラーニングであるべき理由について順を追って説明していきます。
①豊かな感性を育む(小さな差異に気づく)
探究学習やアクティブラーニングは有効ですが、表面的な学習形式だけをなぞっても子供たちの成長は期待できません。
私どもの長年の研究と多方面の経験から「知性は感性の先にある」と考えています。
知性とは
答えのない問いの答えを探し続ける能力であり、思考力、判断力のこと。
※ここではクリエイティビティーや非認知能力とも同義語とする。
感性とは
物事を心に深く感じ取る働き。見たり聞いたりしたことから想像力を膨らませること。
子供たちを成長させるKFS/CSF(重要成功要因)はここだと捉えています。(※教育方法に唯一の正解はないとしても、成功要因を絞り込むことはできると考えています。)
よって、どんな形式で、どんな学習をすすめるにしても、指導者(講師)が子供たちの内面(好奇心・感性)の成長に敏感になり、適切に刺激し、導いていくことが最重要だと思っています。
そして、いま求めている感性の「豊かさ」とは、「きめ細かさ、多様さ」のことであり、「小さな差異に気づく力」と言い換えることができます。
ひとつの物事に対して、たった一方向の解釈では豊かとは呼べませんね。物事を色々な方向から見て・感じて・考えるには、それ相応の時間がたっぷりと必要です。
寄り道、回り道、遠回りなどの道草の時間と経験こそが豊かさの支えとなるのです。
つまり、豊かな感性を育むにはスロー(じっくり)であることが理にかなって自然なことなのです。
②自分で考える、自力で分かる、自ら楽しむ(学習プロセス)
人生において、ずっと良いことが続くことはありませんよね。きっと、いくら努力していたとしても良い時もあれば悪い時もあるはずです。
そして、この「悪い時」にどのような気持ちで、どのように切り抜けていくのかが大事だということで、非認知能力のひとつに「忍耐力、回復力、対応力(GRIT:やり抜く力)」が定義づけられているのだと思います。
こういう悪い状況において、焦らずに落ち着いてやり抜くには「自分で自分が信用できるかどうか」にかかっていると思います。
色々な状況で考え抜いた経験、苦労しつつも一つ一つ積み上げてきた経験、そういうものから本当の自信が生まれるはずです。
こういった「分からない状況」からスタートして、「自力で分かっていくプロセス」を経験し、「分かっていく方法」を習得すること。
殆どの場合、実際には大人や友人のサポートを受けながらなのだと思われますが、本人が「自力でやった」という認識と感覚を得ることが大切。
そういう経験を繰り返すと、楽観的な目処が立ち、どんな状況も挑戦できる、楽しめるタフさ手に入るでしょう。
また、その反対に注意したいのは、他人に丸投げしたり(頼り切ったり)、ハウツーや解説を見たり覚えたりしてるにも関わらず、浅はかに「分かったつもり」になり、成功に浸ること。これではいざ一人になったときに困ってしまいますね。
このように自力で分かっていく方法を習得するには失敗を含めた沢山の経験が必要であり、それにはスローであることが必要なのです。
スローラーニングはこれまでの教師主体の講義形式で、知識(暗記)を重視する教育方法とは対極にあり、生徒にも、親にも、講師にも、意識の刷新が必要になってきます。
また、IT革命(情報革命)以前は、子供たちに「せっかくの好奇心」があっても、必要な情報や環境に巡り会えず、諦めざるを得ないことが多くありました。
しかし、今はインターネットのおかげで、使い方さえ間違わなければ、ヒントや手がかりを得ることができる、非常に恵まれた環境にあります。上手に活用していきましょう!
それではスローにこだわる理由の説明が終わりましたので、次はスローラーニングのメカニズムについて、更に踏み込んで解説していきます。
2.スローラーニングのメカニズムについて
(1)人を構造化する
まずは子供たち(人)の成長のメカニズムについてお話します。
- この図のように、人には生まれつき「好奇心」が備わっています。一種の本能です。
- この好奇心を土台として「感性」が養われて行きます。
- この鋭く育った感性が「ことば」を豊かに理解していきます。
- この「ことば」を自由自在に用いることで高度に「思考」を構築していきます。
- この思考をもとに「判断(決断)」を下します。
- こうして主体的な状態がつくられます。
- すると、好奇心を中心としたこの主体性(自立性)がエンジンとなり、知識とスキル(技術)をどんどん吸収していきます。
- そうして、クリエイティブな表現(行動)ができるようになります。
(2)教育の順序
重要なのは「中心から外側に向かって順序よく連鎖するように育てていく」ということです。
中心が育っておらずスカスカな状態で外側を固めることは無意味でしかありません。
必ずどこかで伸び悩み(停滞、頭打ち)やバーンアウト(燃え尽き症候群)が起こってしまいます。
- 感性が鋭い人ならば「ことば」に含まれる多くの概念や体系を想像し、その言葉を使って高度に思考ができるでしょう。
- 感性が鈍い人ならば「ことば」を表面的にしか理解できず、思考が停止するでしょう。
子供たちをよく観察し、中心から外へ順序よく連鎖させるように導いてあげることが大切です。
(3)教育と適齢(年齢)の関係
何かの要素において、子供たちの能力が発達しやすい時期を「敏感期」、「ゴールデンエイジ」などと表現(定義)されることがあります。
これは「その時期にしか身につかないもの」という脅迫めいた理解ではなく、「身につきやすい時期」としてポジティブに捉えて頂きたいのです。
先ほど「内から外へ順に連鎖させる」と申した通り、「要素と順序」は大切です。
しかし、それが起こる時期・タイミング・速度などは人それぞれです。
子供たちをよく観察し、個々の成長に合わせて「最適期」をみつけてやれば良いのです。
【啐啄同時(そったくどうじ)とは】
- 鳥の卵がふ化し、いよいよその殻を突き破るとき、内側からヒナ鳥が殻をつついて音をたてます。これを「啐(そつ)」と言います。
- その音を待っていた親鳥が外からついばんで殻を破る手助けをします。これを「啄(たく)」と言います。
この「啐(そつ)」と「啄(たく)」が最適たタイミングで起こることでヒナ鳥は下界に出ることができるのです。
「のびてく」では、この関係性こそが教育のあるべき姿だと考えています。
3.スローラーニングの教育スタイルについて
スローラーニングの学習スタイルを図に表します。
それぞれが相互密接に関係していますが、それぞれを取り出して説明して行きます。
(1)中心:子供たちは自分で育つ力を備えている(前提)
子供たちは「自分で育つ力」を生まれた時から備えています。
それは「好奇心を起点とした学習本能」のことです。
好奇心は「推測、想像、推理、検証」といった思考や行動として表れてきます。
【豆知識】
蜘蛛や蜂は親が教えなくても上手に巣を張る(作る)ことができます。生存戦略として本能にインプットされているのです。一方、人には「知らないものを確かめ(好奇心)、学習し、変化対応する」というものが本能にインプットされています。
人の赤ちゃんが言葉を覚えるプロセスを考えてみましょう。
ある場面で発せられる音(言葉)を聞き、その時に起こる事象から「この音はこういう意味ではないか?」と推測し、それが何度も何度も繰り返し起これば「きっと間違いない!」と学んでいきます。また、音と意味の結び付けを一時的に間違えることもありますが、それも「あれ?違うかも?」と気づき修正していきます。
生まれながらにして持っている「知りたい」という「好奇心」は成長に欠かせない学びの源泉なのです。
そして、最も大切なのは「推測、想像、推理、検証」という経験こそが学びであり成長であることを周囲の大人が理解することです。
(2)インプット:子が好奇心を発動させる機会を作る
このような前提にたつと、親は子が好奇心を発動させる機会を沢山つくってあげれば良いのです。主役は子供です。
子供たちが実際に見て、触って、聞いて、味わって、感じるといった「経験」を通して、遊ぶように学ぶことが理想です。
- 植物、生き物、風や雨などの自然に触れる(水、風、火、音などは子供たちが大好きなものです)
- 絵を描いたり、ものづくりをしたりする
- 言葉遊びをしたり、会話したりする
- 音楽を聴いたり、演奏したり、歌ったりする
- 体を動かして外遊びする
こんな遊びを通して、探究的に学ぶことができれば最高です。
(※体系的で限定的な知育道具(おもちゃ)よりも、自然の中には全ての要素が自由かつ圧倒的に存在しています。)
ここで重要なことは「推測、想像、推理、検証を何度も何度も繰り返す時間をたっぷりと与えてあげる」ということです。
この推測、想像、推理、検証は色々な方向に膨らませることができます。それこそ無限です。
そして、これこそが思考の深さや表現の豊かさの正体であり、知識詰め込みの暗記学習との圧倒的な差となって現れる部分なのです。
一見、非効率で無駄だと思われる回り道、寄り道、遠回りなどの道草こそが、成長にとって不可欠な行為なのです。
(3)アウトプット:表現して、共有して、好きになる
スローラーニングでは、たっぷりとした時間の中で、深く、立体的に、自由に思考を繰り返します。
そうすると、子供たちの頭の中に「色々なもの」が複雑に絡み合い、思考がグルグルと衝突を起こすようになり、消化不良を起こすようになってしまいます。
ここで重要なことは「アウトプットし続ける」ということです。
アウトプットするには重なっていたものをまとめ、要らないものを捨てるなどの「処理」が必要になります。
何より、アウトプットを経て推測が「検証」され、ひとつ先へと進むことができます。
そして、次の疑問、次の好奇心、次の興味へと螺旋状に発展していくのです。
また、外からの目を意識し、チェック機能が備わるので俯瞰的な視座にもつながります。
インプットと同様、アウトプットの機会作りは欠かせません。
また、子供たちは褒められるのは大好きですが、何でもかんでも褒められても困ってしまいます。
大人も心から不思議がって、素直にすごいと思う「心からの反応(フィードバック)」に子供たちは喜びを感じるのです。
当たり前だよと決めつけず、大人も頭と心を柔らかくして、ぜひ出来事を共有しましょう。
そして、小さな発見や学習のプロセスに対する子供の想いを共感してあげましょう。
きっと、子供たちは学ぶことが好きになります。
(4)大人の役割:手本とサポート
このように、子供たちは自らの好奇心を基にインプットとアウトプットの機会が十分にあればすくすく成長して行きます。
よって、親の役割をまとめると
【親の役割】
- インプットの機会をたっぷりつくる。サポート(ナビゲート)する。
- アウトプットの機会をたっぷりつくる。サポート(ナビゲート)する。
- お手本になる「スローに楽しむ姿勢」を見せる。(※正解や知識を教えるのではない)
となります。
そして、「サポート」の中身は
【サポートの中身】
- 内から外への順序良い連鎖
- 子どもの観察
- フィードバック
となります。
最後に、お手本についてですが、子供は観察や推測を通して学ぶので、大人(親)をものすごく良く見ていますし、最も影響を受けています。
是非、子供たちと一緒になってスローラーニングを実践し、遊ぶように学んでいただければと思います。
それが子供たちが一番喜ぶことであり、一番のサポートになることでしょう。
【注意】
TV、YouTube、ゲームなどの激しい刺激は、子どもの本能が想定している刺激のレベルをはるかに超えているので、好奇心がしぼみ、思考が停止してしまいます。もしも多く浴びすぎている場合は、もう一度「好奇心、感性」への訴えかけのフェーズに戻り、遊ぶようにすれば問題ありません。はじめは退屈に感じるかもしれませんが、上手く手本を見せてナビゲートすれば大丈夫です。自然の面白さに敵うものはありません。ルールで縛るよりうも、代替となるものを見つける方が良いでしょう。
【メッセージ】
子をサポートするのは決して簡単なことではありません。
例えば、幼児期においては好奇心や感性の発達に注目すべき時期ですので、何かの探究課題に取り組んだ(遊んだ)結果の出来栄えは重要ではありません。正解か不正解かも重要ではありません。
そういった最終的に表面に出てくる現象ではなく、何を感じて、何に興味を持っているのか、それは以前(他人ではない)と比べてどう変化しているのかに注目すれば良いのです。
文章では簡単そうに思えますが、それを親だけで行うには難しく感じたり、助けが欲しいなと思う場面もあるのではないでしょうか。
「のびてく」では入塾された家庭全体を丁寧にサポートさせていただきます。入塾をご検討されていらっしゃる場合は事前にお気軽にご相談ください。
※ギフテッド児のサポートにも慣れておりますので、ご相談も承っております。WISC-IVの検査や各種診断の必要も全くありません。お気軽にご相談ください。
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