時代の変化とテクノロジーの進化によって、日本でもオンラインの習い事や塾が増えてきましたね。その一方、これまでの学習形態とは大きく変わるため、オンラインの習い事や塾を利用することを様子見している方も多いようです。
オンラインの塾や習い事のメリットとデメリットについて、「送り迎えが不要」とか「緊張感が保てない」などのように一般解説されているサイトは沢山あるものの、肝心の「教育の視点」が抜け落ちていて、選び方として参考にするのは少し危険だと感じています。
そこで今回は上手にオンラインの習い事や塾を活用する方法について、3つの「誤解されがちなこと」の視点で解説していきたいと思います。
誤解されがちなこと
- オンライン形式に関する誤解
- 流行っているからといって、正しいとは限らない。
- 家庭で過ごす時間が最重要。共働きの家庭は有利な面も。
筆者:ノビ先生
〜簡単な経歴〜
- 小学生と中学生と高校生の家庭教師(中学受験、高校受験、大学受験)
- 中学生向けの学習塾の講師(定期試験、高校受験)
- 社会人向け研修の講師(ロジカルシンキング、クリティカルシンキングなど)
- 社会人向けのITスクール講師(Webデザイン、プログラミング、ネットワークなど)
- 人材育成のコンサル、トレーナー、ファシリテーター、研修講師(マネージャー育成、新人教育、生産品質と管理の改善など)
〜経験した指導教育方式〜
- 対面個別指導、オンライン個別指導
- 対面集合授業形式
- オンライン授業(オンデマンド、ビデオ学習)
- 課題解決型の授業(アクティブラーニング)
- 短期、中期、長期での指導
- 就職サポート、就職後のフォロー
〜自身の子育て〜
- 息子は硬式テニスと最難関受験の文武両道を実現。
- 娘をはピアノと自己推薦型受験の文芸両道を実現。
自分自身(ノビ先生)の「流された学習経験」、つまり「しくじり体験」をもとに、ちゃんと流されず考えて楽しむ子育てを身を持って実践、検証、経験しています。
このように、各種スタイルの指導を経験し、それぞれのメリット・デメリットを熟知しています。また、教育(指導・講師)だけでなく、新規事業や新規海外工場の立ち上げ、組織のマネジメント、自分自身の独立起業など、実社会の広い視点から「これからの子どもたちに必要な教育」を考えています。
1.オンライン形式に関する誤解
まずは学習形式について見ていきましょう。このようにざっくりと①〜⑧の8つの学習形式に分類することができます。
A:先生主体の講義形式(※一問一答式のカリキュラム。正確な知識や手順を暗記する。) | B:生徒主体のアクティブラーニング(※気づく力や発想力、思考力や考え抜く力を鍛える) | |
あ:リアル・対面方式(通塾して講義を受ける。家庭教師に個別指導を受ける。) | ①Aあ:リアル対面講義 | ②Bあ:リアル対面アクティブラーニング |
い:リアル・動画視聴方式(教室でビデオ学習&個別質問) | ③Aい:リアル講義動画視聴 | ④Bい:リアル動画アクティブラーニング |
う:バーチャル・対面方式(自宅でZoomなどでオンライン個別指導) | ⑤Aう:バーチャル対面講義 | ⑥Bう:バーチャル対面アクティブラーニング |
え:バーチャル・動画視聴方式(自宅でPCやタブレットで動画視聴、問題回答) | ⑦Aえ:バーチャル講義動画 | ⑧Bえ:バーチャル動画アクティブラーニング |
※動画視聴方式の授業のことを「オンデマンド方式」と表記することもあります。
オンラインと言っても、ビデオ録画した授業をWebで配信しているだけのものや、タブレットを使った一問一答の問題を解くだけのもの(解説付き)だけでなく、個別指導を中心としたアクティブラーニングまでと幅広いものです。
このように、オンライン学習を「自宅からインターネット回線を利用して学ぶこと」とするならば、実は一種類ではなく様々な教育や学習のスタイルが混在していることをお分かりいただけたでしょうか。
講義形式にはバーチャルとリアルのどちらが相性が良いのか、アクティブラーニング形式にはバーチャルとリアルのどちらが相性が良いのか、これらについてもう少し踏み込んで見ていきましょう。
『講義形式とは』
知識習得が中心の学習。先生が複数の生徒に向かって学問や学説、技術などの意味や内容を説明して聞かせること。一方通行の学習形式で座学とも言われる。
→講義では「先生の話をを聞くこと」が中心になるので、 より分かり易く丁寧な解説(解き方)の授業(先生)が良いとされます。授業が分かり易くなるほど知識の定着は良くなるため、分かり易いトップ講師の授業を録画したバーチャル講義を共有するのが効率的な学習です。ところが、講義形式に慣れた生徒は学習自体が受動的なため、サボれないように集中力までを管理してもらわないと頓挫してしまうことが多い。よってサポート(強制的な管理)面からバーチャルではなく、リアル対面方式が人気になることが多い。
『アクティブラーニングとは』
思考力や判断力を鍛えることが学習の中心。従来の教員が生徒に対して一方的に講義をする形式とは異なり、学修者(生徒)の積極的な授業への参加を促す授業や学習法の総称のことをアクティブ・ラーニングと呼びます。つまり、従来の「受動的な授業、学習」とは真逆の「積極的・能動的な授業、学習」のことです。学習方法としては、通常の算国理社といった科目学習の他、何かしらの発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習などを通しつつ、グループディスカッション、ディベート、グループワークなどを行うことで学習効果を高めていきます。
→授業中だけが学習時間ではなく、授業外の調べ学習などの自発的な学習習慣がポイントになります。バーチャルかリアルかの受講形式ははあまり関係がなく、それよりもカリキュラムの内容や講師の指導力・経験が重要になる。実質的に講義形式よりも上位にくる学習形態のため得られるものが多いのが特徴ではあるが、母国語に対する感度や理解、そして相手の話を聞くという基本的な能力が備わっていることが学習条件となる。
〜誤解されがちな点①〜
「リアル(通塾)」か「バーチャル(オンライン)」かの学習形式で悩んでしまう方が多いようなのですが、「知識習得の講義形式」と「思考力を鍛えるアクティブラーニング形式」とでは教育・学習の目的(身につくもの)が全く違ってきます。「習わせること自体」をゴールとしてしまわないよう、お子さんのどんな能力を伸ばしてあげたいのかといった教育の目的に合った学習の進め方を選択する事が大切になってきます。
2.流行っているからといって、正しいとは限らない
「講義形式」と「アクティブラーニング」を比較すると、現時点では古くから続く(変化していない)講義形式の受講者が圧倒的に多いでしょう。流行っていますね。
一方、圧倒的に少数ではありますが、一部の先を見据えた学校や塾やインターナショナルスクールなどでは実施されています。文科省の学習指導要領が改定されたので、(※まだまだ形式上だけではありますが)公立の小学校でも取り入れられるようになります。いよいよ流行り始めてきましたね。
さて、現時点で流行っているもの、これから流行るもの、どちらが良いのでしょうか?
当然ではありますが、流行っているかどうかを判断の根拠にすること自体が間違っていますね。流行りではなく、内容で判断すべきことです。
前項で講義形式とアクティグラーニングの特徴や優れた点について見ていきましたので、ここではそれぞれの注意点を中心に見ていきましょう。
『講義形式とは』
強制的・管理的な指導なので、受け身な生徒には楽(らく)な学習。丁寧に知識や解き方を教わるので「分かったつもり」になり易いため、授業後の主体的な咀嚼・解釈が重要になる。しかし、大抵は例題→類題→応用問題と同種の問題の解答をゴールとしてしまうことと、状況の把握力、情報の整理力、思考力といった部分は先生に頼っているため、生徒の問題発見力や解決につながる考える力が育ちにくいことが難点。インスタントな学習(ファストラーニング)なので伸びが止まり易く、個性は伸びにくい。学習期間の経過とともに、伸びが頭打ちしたり鈍化する傾向があります。(※バーンアウト、燃え尽き症候群)
『アクティブラーニングとは』
自主性や意欲が不可欠。グッとあと伸びするので中長期的な視点が必要。自由度が高く個性は伸び易い。受け手(生徒)の理解力と意欲が育ってくるとテキストメッセージのやりとり(コーチング)だけでも伸びていきます。学習期間の経過とともに、伸びが加速する特徴があります。一方、受け手側に目的意識がなかったり、丁寧に教えてもらうことが勉強だと思っている場合は学習が成立しないこともあります。
いかがですか?どちらが良いでしょうか?
これは親の考え方(価値観)によって大きく意見が分かれるでしょう。
協調性を磨き集団で力を発揮するタイプになって欲しいのか、それとも自立して個性を確立していって欲しいのか。
日本社会では協調性が重視されるので、そこに合わせた講義形式の教育が今の主流という訳です。
自立して自分の手で歩んでいって欲しいのなら、勇気をもって主流から外れた教育を選択することが求められます。
〜誤解されがちな点②〜
流行っているから、皆がやっているから正しいのではありません。将来、子どもにどうなって欲しいのかという価値観に基づき、最適な教育を選択する必要、変わる必要があります。※特に地方では教育に関しては「現状維持バイアス」が強く作用しているので注意が必要です。(※滋賀県在住ノビ先生の実体験より)
3.家庭で過ごす時間が最重要。共働きの家庭は有利な面も。
教育とは子に注入するものではなく、子が吸収するものです。
経験→咀嚼→消化→吸収の順序を守ることが教育の鉄則です。
食べ物から栄養をうまく吸収するには咀嚼(そしゃく)と消化が重要であるように、習い事や遊びなど過ごした時間を自分なりに咀嚼し、消化し、吸収する時間も大切になります。
ところで、子どもたちは「どこから」「何」を吸収するのでしょうか?
1日は24時間です。
- 睡眠:8〜10時間
- 小学校:8時間
- その他:6〜8時間
ざっと、このような配分になりますね。この「その他」には家庭で過ごす時間、遊び、習い事などが含まれます。
睡眠も重要です。身体的な成長に必要なだけでなく、昼間の出来事を寝ている間にしっかり整理し吸収するので、質の良い睡眠の確保も欠かせません。(※ゲームなどで興奮したまま眠ると良くない。)
基本的に小学校の授業をコントロールすることはできないので、「その他」の過ごし方がポイントになってきます。(※小学校受験などで理想の環境を選ぶことはできるが。)
どうしても「いかに良い習い事に通わせるか」に目が行きがちなのですが、それよりももっと大切なことがあります。
それは家庭における親の態度や姿勢です。ここで決まると言っても過言ではありません。
親自身が努力する姿、挑戦する姿、そのプロセスを楽しむ姿・・・このように親自身が子のロールモデル(お手本)となっていれば、子は真似から始まり、段々とその姿勢を見習うようになっていきます。
※娯楽や息抜きを一切排除しなくてはいけないということではありません。自然体で大丈夫ですが、子に言うことと親がやっていることにギャップがあり過ぎると良くないでしょう。
共働き家庭や一人親家庭など、一見お子さんと接する時間やサポートの時間が取れず教育面で不利なように捉えられがちですが、ロールモデルという視点から考えてみると、十分に有利な状況であるとご理解いただけるのではないでしょうか。(※時間的な制約からオンラインの習い事は大変有効だと思います。)
子に注入し与えることよりも、親自身が挑戦していることや充実感などを日々の生活の中で語ってあげると、お子さんは自然と見習い吸収していってくれると思います。
学校や塾で経験し学んだ内容や自分で考えたことなどについて、親に心から関心を持ってもらう事ができると子どもは安心して学びに向かうことができます。
子は家庭から多くを吸収し、育つのです。
手取り足取り教える時間は取れなくても、過剰な習い事の時間を削ったり、TVゲームなどの時間を削ったりすることで、親子のコミュニケーションの時間を増やすことは十分に可能なはずです。
沢山習い事をしてオーバーフローしてしまえば全てがゼロになってしまうので、咀嚼・消化の時間を確保し確実に吸収できる分量にまで習い事を減らす方が賢明です。
リビングのテーブルで親が仕事や読書をし、子どもは宿題や読書をする。ふと、会話が生まれる。そんな時間が大切だと思います。
〜誤解されがちな点③〜
教育は注入するものではなく、吸収されるものであり、経験→咀嚼→消化→吸収の順序を守ることが教育の鉄則です。与えすぎに注意しましょう。また、家庭で過ごす時間の価値についても再認識し、習い事の位置づけを決めましょう。
さいごに
3つの誤解されがちな視点でオンラインの習い事について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
万人に向く教育や習い事はありません。
外部の習い事で教育が完結するのではなく、家庭の時間で子どもが咀嚼・消化・吸収するものだと認識していただくと、各ご家庭やお子様に必要な習い事や教育が何であるかが見えてくるのではないでしょうか。
このコラムが少しでも皆様の習い事や塾選びの参考なったなら幸いです。
(スローラーニング塾のびてく 塾長・講師 ノビ)
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