先日の日経新聞から抜粋です。
運動部の「学業基準」指針
大学スポーツ協会 勉強との両立を促す
体育会系の学生がスポーツに傾注し、成績不振に陥る例は少なくない。学業と運動との両立を促し、就職などのキャリア形成を円滑に進めてもらう狙いがある。
さて、この問題を深く考察しようとすると、アマチュアスポーツ、プロスポーツ(商業スポーツ)、体育教育・・etc そういった背景を理解する必要があります。
本来アマチュアスポーツの祭典であった「オリンピックの商業化」も同様の課題を含みます。
これらの議論はあまりにも広範囲に及びますので、ここでは論点を「どうすれば文武両道、スポーツと学業を両立できるのか」に絞って書いていきます。
1.失敗しながらでも、自分の頭で考えるように導く
スポーツと学業の両立を目指す中での一番の問題点(敵、壁)は「時間」と「意欲(興味)」の2つでしょう。
ここに注目して見ていきましょう。
時間について
- スポーツは反復練習、学業は暗記を中心とする
- スポーツと学業を別のものとして取り組む
まず、暗黙の前提条件(思い込み)として、このように子育てをスタートしていませんか?
こうなると、文武を両立させようとしても「時間」が足りなくて、結局どちらかを犠牲にしてしまう(疎かになってしまう)しか方法が無くなってしまいます。スポーツまたは学問の習熟レベルが高まれば高まるほど(結果が出れば出るほど)、悩みは大きくなって行きますね。
小学校の高学年に入るあたりでそんな壁にぶち当たることは必然でしょう。非常に悩ましい問題です。
さて、話を戻します。
この問題を根本的に解決するには、暗黙の前提を見直すことしか手立てはありません。
つまり、
「文武は別のもの」ではなく、「そもそも文と武、二つでひとつのものである。」
という大前提を持つことです。(※元来、文武両道とはそういう意味であるという説もあります。)
そして、その共通項を磨いていくということです。
では、その「共通項」とは何か?
それは、
「分からないこと」に対して、状況を分析し、情報を集め、時には協力を仰ぎ、仮説検証を繰り返して、答えにたどり着く。
であり、このプロセスはスポーツであっても学問であっても共通のことです。
さらに、この問題解決や理解へのプロセスを磨くコツ(秘訣)は、
正解を教えてもらって簡単に知ってしまうことを避け、「自分自身で自分なりの正解にたどり着く方法」を探すこと。
です。
こうすることで、スポーツと学業で相互に応用が効き、一石二鳥で両立が見えてきます。
ただし、正解にたどり着くまでには、多くの不正解(失敗)を繰り返す必要があります。(スローラーニング)
この失敗こそが両立の秘訣なのですが、なぜか世間では「そんな無駄時間もったいない。」として、一番美味しいところを捨ててしまうのです。
昔から「失敗は成功の母」という素晴らしい言葉があるのも、みなそれを嫌がるからわざわざ言うのでしょう。
やはり「分からない」という時間は楽しくない。知っている側は教えてあげたい。それが人間の本性なのでしょうね。
そこをグッと我慢です。
意欲(興味)について
これは指導者や親が重要になってくるのですが、分からないことが分かるようになる楽しさを感じさせてあげること。
自然と、手本を見せ経験させてあげること。
学ぶって特別なことじゃなく、自然なことで、楽しいのだという「空気感」が案外大切です。
教えると言うよりは、何故だろう?どうしてだろう?知りたいなという姿勢があれば良いのです。
子供から何故何故攻撃を受けた時に、「さ〜ね〜。」と一言で片付けず、一緒にワイワイガヤガヤやりましょう。
子供にとって一番身近な親自身が「学ぶ姿勢」を見せていると、お子さんはきっと自然と学問に興味が湧きます。
本を読むとか、新聞を読むとか、ニュースを見るとか、きっかけは何でも良いですが、日常でお子さんと語り合う時間を多く取ってみましょう。
すごく、シンプルですが、たったこれだけかと思います。
やることはシンプルですが、難易度は高いと思いますので、焦らず楽しみましょう!
2.スポーツだけでなく、学業においても同じ
この問題はスポーツ界だけでなく、学問においてもほぼ同じなんだと感じています。
先ほどの「学びのプロセス」をすっ飛ばして、目先の知識をたくさん詰め込み、高速道路を走るように先を競います。
何故なのでしょうか?
ずっと言われていますが、大学の合格が最終目的になっているからでしょう。
スポーツ界と何も変わりませんね。全く同じ構造です。
知識、学力は不要なものではなく、非常に大切な要素です。
その素晴らし知識や学力を「どこでどう使っていくのか」、「何のために必要なのか」を自分で考える必要があるだけです。
繰り返しになりますが、「自分の道を自分で決断できるようになる」には学びのプロセスが大切です。
主体性を身につけるのは、簡単ではありません。
先日書いた(DeNA前監督A・ラミレスさん)記事にもありましたが、エリート中のエリートのプロ野球の一軍選手であっても、主体的な選手は非常に少ないようです。それが、プロスポーツ選手のセカンドキャリア問題の根源であると、私は考えています。
そのスキル(技能)をどのように獲得したかが重要。他の分野でも十二分に応用し、活躍できるはずだと考えています。
ちょっと、話が膨らんできましたので、このあたりで締めます。
最後になりますが、子供たちが社会に対する解像度(感性、理解力、洞察力など)を高め、選択肢を広げられるよう、私たち大人はサポートして行きたいですね。