今回は2018年度の灘中学校の算数1日目で出題された平面図形の問題です。クリティカルシンキングが求められる灘中らしい問題のひとつです。楽しんで解いてみてね。
問題(2018年度、灘中学校の算数1日目)
上の図のように、正六角形ABCDEFの内側に点Pをとり、6つの頂点とPをそれぞれ直線で結びます。三角形ABP、CDP、EFPの面積がそれぞれ3cm²、5cm²、8cm²であるとき、三角形BCPの面積は( )cm²です。
学習noteの進め方
まずは目安時間の間、「クリティカルシンキングのトレーニング手順」に沿って考えてください。慣れないかもしれませんが、いつも通りには解かず、必ず思考の手順を守ってください。(※時間に余裕があれば目安時間で区切らず、1時間程度考え続けてもOKです。ただし、完全にお手上げ状態で何も思いつかないのであれば無闇に延長せず、そこで切り上げてください。)
その後(解き終えたら、または目安時間が経過したら)、下にスクロールして解説(思考の例)をじっくり読んでください。
ここでは正解か不正解かが重要なのではなく、問題文をどのように紐解いていくかの目の付けどころと思考の道順が重要であって、そこ(クリティカルシンキング)を鍛えることが今回の目的です。
クリティカルシンキングを習得すれば初見の難問に対応できるようになります。頑張りましょう!
クリティカルシンキングのトレーニング手順(批判的思考)
- 1
目的は何かを常に意識する。
(何を問われているのか?どんな理解を試されているのか?など題意を見抜く。)- 2
前提条件、置かれた環境に合わせて考える。
(思い込みや思考の偏りを排除し、客観的に情報を整理•分析する。)- 3
目的を踏まえたうえで、「考える枠組み」を考える。
(どんな項目について考えればゴールに到着するかの見当をつける。)- 4
構造的にアプローチする。
(抜け•漏れ•ダブりを防ぎ、原因と結果の関係に注目し、理屈の構造を明らかにする。)- 5
問い続ける。
(出た結論に対して「なぜ?」「だから?」「本当に?」と問い続けて見落としや新たな発見につなげる。)
クリティカルシンキングの例(解説)
1.目的は何かを常に意識する。
(何を問われているのか?どんな理解を試されているのか?など題意を見抜く。)
- 極めてシンプルな図形であり、与えられた条件が少なすぎる。
- つまりは、この条件でできることだけで、求められるという裏返しである。
- 小さな当たり前の条件にひそむメッセージ(ヒント)を見逃さないようにしよう。
このように、いきなり解き始めるのではなく、まずは客観的に題意の理解に集中することが大切です。
2.前提条件、置かれた環境に合わせて考える。
(思い込みや思考の偏りを排除し、客観的に情報を整理•分析する。)
- 正六角形である。
- 一片の長さは分からない。(編の長さから計算するこは不可能)
- 正六角形の内側には三角形が6つあり、その面積の合計は正六角形の合計と等しい。(当たり前だが、何か意味があるはず)
- 内部の6つの三角形のうち、3つの面積は分かっている。その場所は飛び飛び。
ここでは思い込を排除し、事実だけを書き入れて整理することが大切です。
3.目的を踏まえたうえで、「考える枠組み」を考える。
(どんな項目について考えればゴールに到着するかの見当をつける。)
- 比も使えない。
- 一片の長さからの計算も使えない。
- となると、面積の置き換え、移動くらいしかない。
- できることが少なすぎる。困った。困った。
- こういう時は、最初の条件に戻って、見落としがないか、ヒントが隠されていないかを確認してみよう。
- まずは正六角形であること。
- 正六角形は正三角形が6つ集まってできている。しかし、Pは中心点ではない。
- 分かっている面積3cm²、5cm²、8cm²の違いは高さであり、底辺は同じ(正六角形の一辺)
- 外側に円を描くことはできるが、やはり三角形の高さ自体はでない。
- 正六角形の特徴を思い出そう。
- あ、外側に正三角形をつくることができる!これだ!
ここでは考える方向性だけに集中しましょう。
4.構造的にアプローチする。
(抜け•漏れ•ダブりを防ぎ、原因と結果の関係に注目し、理屈の構造を明らかにする。)
- このように補助線を入れると正三角形GHIが表れる。
- △GHIは正三角形が9つ集まったものである。(3+5+8)×3 =48
- △BHC = 48 ÷ 9 = 16/3
- 四角形BHCPの面積は3+5=8である。
- よって、△BCP = 8 - 16/3 = 8/3 cm²
5.問い続ける。
(出た結論に対して「なぜ?」「だから?」「本当に?」と問い続けて見落としや新たな発見につなげる。)
- 見えてしまえば間違いようのないくらい単純な構造。
- 間違いない。
解答
- AB、CD、EFを延長する補助線を入れると正三角形GHIが表れる。
- △GHIは正三角形が9つ集まったものである。(3+5+8)×3 =48
- △BHC = 48 ÷ 9 = 16/3
- 四角形BHCPの面積は3+5=8である。
- よって、△BCP = 8 - 16/3 = 8/3 cm²
以上
解答に必要となる前提知識
- 必要な前提知識
- 難易度
- 正三角形と正六角形の特徴
- ★★☆☆☆
この問題から学んだこと
- とにかく、与えられた条件に隠されたメッセージを読み解くことが重要。
- 条件が少なく、できることが少ないことも重要なメッセージである。
- 普段から正三角形などの図形を作図し、内部、外部にどう広がっていくか、それじれがどう関係しているかの興味を持っていることが役立つ問題でしたね。