自然科学

平面図形(灘中)[S-0014-C]

思考配分
知識:2 論理:3 批判:5
目安の時間
20分

今回は2018年度の灘中学校の算数1日目で出題された平面図形の問題です。クリティカルシンキングが求められる灘中らしい問題のひとつです。楽しんで解いてみてね。

問題(2018年度、灘中学校の算数1日目)

灘中の平面図形の問題

上の図のように、正六角形ABCDEFの内側に点Pをとり、6つの頂点とPをそれぞれ直線で結びます。三角形ABP、CDP、EFPの面積がそれぞれ3cm²、5cm²、8cm²であるとき、三角形BCPの面積は(       )cm²です。

学習noteの進め方

まずは目安時間の間、「クリティカルシンキングのトレーニング手順」に沿って考えてください。慣れないかもしれませんが、いつも通りには解かず、必ず思考の手順を守ってください。(※時間に余裕があれば目安時間で区切らず、1時間程度考え続けてもOKです。ただし、完全にお手上げ状態で何も思いつかないのであれば無闇に延長せず、そこで切り上げてください。)

その後(解き終えたら、または目安時間が経過したら)、下にスクロールして解説(思考の例)をじっくり読んでください。

ここでは正解か不正解かが重要なのではなく、問題文をどのように紐解いていくかの目の付けどころと思考の道順が重要であって、そこ(クリティカルシンキング)を鍛えることが今回の目的です。

クリティカルシンキングを習得すれば初見の難問に対応できるようになります。頑張りましょう!

クリティカルシンキングのトレーニング手順(批判的思考)

1

目的は何かを常に意識する。
(何を問われているのか?どんな理解を試されているのか?など題意を見抜く。)

2

前提条件、置かれた環境に合わせて考える。
(思い込みや思考の偏りを排除し、客観的に情報を整理•分析する。)

3

目的を踏まえたうえで、「考える枠組み」を考える。
(どんな項目について考えればゴールに到着するかの見当をつける。)

4

構造的にアプローチする。
(抜け•漏れ•ダブりを防ぎ、原因と結果の関係に注目し、理屈の構造を明らかにする。)

5

問い続ける。
(出た結論に対して「なぜ?」「だから?」「本当に?」と問い続けて見落としや新たな発見につなげる。)

クリティカルシンキングの例(解説)

1.目的は何かを常に意識する。
(何を問われているのか?どんな理解を試されているのか?など題意を見抜く。)

  • 極めてシンプルな図形であり、与えられた条件が少なすぎる。
  • つまりは、この条件でできることだけで、求められるという裏返しである。
  • 小さな当たり前の条件にひそむメッセージ(ヒント)を見逃さないようにしよう。

このように、いきなり解き始めるのではなく、まずは客観的に題意の理解に集中することが大切です。

2.前提条件、置かれた環境に合わせて考える。
(思い込みや思考の偏りを排除し、客観的に情報を整理•分析する。)

  • 六角形である。
  • 一片の長さは分からない。(編の長さから計算するこは不可能)
  • 正六角形の内側には三角形が6つあり、その面積の合計は正六角形の合計と等しい。(当たり前だが、何か意味があるはず)
  • 内部の6つの三角形のうち、3つの面積は分かっている。その場所は飛び飛び。

ここでは思い込を排除し、事実だけを書き入れて整理することが大切です。

3.目的を踏まえたうえで、「考える枠組み」を考える。
(どんな項目について考えればゴールに到着するかの見当をつける。)

  • 比も使えない。
  • 一片の長さからの計算も使えない。
  • となると、面積の置き換え、移動くらいしかない。
  • できることが少なすぎる。困った。困った。
  • こういう時は、最初の条件に戻って、見落としがないか、ヒントが隠されていないかを確認してみよう。
  • まずは正六角形であること。
  • 正六角形は正三角形が6つ集まってできている。しかし、Pは中心点ではない。
  • 分かっている面積3cm²、5cm²、8cm²の違いは高さであり、底辺は同じ(正六角形の一辺)
  • 外側に円を描くことはできるが、やはり三角形の高さ自体はでない。
  • 正六角形の特徴を思い出そう。
  • あ、外側に正三角形をつくることができる!これだ!

ここでは考える方向性だけに集中しましょう。

4.構造的にアプローチする。
(抜け•漏れ•ダブりを防ぎ、原因と結果の関係に注目し、理屈の構造を明らかにする。)

灘中算数の補助線

  • このように補助線を入れると正三角形GHIが表れる。
  • △GHIは正三角形が9つ集まったものである。(3+5+8)×3 =48
  • △BHC = 48 ÷ 9 = 16/3
  • 四角形BHCPの面積は3+5=8である。
  • よって、△BCP = 8 - 16/3  = 8/3 cm²

 

5.問い続ける。
(出た結論に対して「なぜ?」「だから?」「本当に?」と問い続けて見落としや新たな発見につなげる。)

  • 見えてしまえば間違いようのないくらい単純な構造。
  • 間違いない。

解答

  • AB、CD、EFを延長する補助線を入れると正三角形GHIが表れる。
  • △GHIは正三角形が9つ集まったものである。(3+5+8)×3 =48
  • △BHC = 48 ÷ 9 = 16/3
  • 四角形BHCPの面積は3+5=8である。
  • よって、△BCP = 8 - 16/3  = 8/3 cm²

以上

解答に必要となる前提知識

必要な前提知識
難易度
正三角形と正六角形の特徴
★★☆☆☆

この問題から学んだこと

  • とにかく、与えられた条件に隠されたメッセージを読み解くことが重要。
  • 条件が少なく、できることが少ないことも重要なメッセージである。
  • 普段から正三角形などの図形を作図し、内部、外部にどう広がっていくか、それじれがどう関係しているかの興味を持っていることが役立つ問題でしたね。

★teku先生のX(ポスト)

ギフテッド関連コラム

  1. 【辛口】ギフテッドに最適な学習方法は飛び級や先取りにあらず。

  2. 【ギフテッドの育て方】個性や才能を伸ばす教育のコツや習い事について真面目に語ります。

  3. 行きたがらない小学校に無理やり行かせた結果〜行ってよかった?の問いに中学生になった今、どう答えたか〜

  4. ギフテッドと塾と中学受験

オススメ or 新着コラム

オススメの記事 新しい記事
  1. 「好奇心を起点に、主体的に学び、深める」これは一種の「技術」である。

  2. 教育における「3つの要素」を知ろう。

  3. 【セレンディピティー】偶然の発見には理由がある。

  4. 問われるのは「問う力」。簡単に納得しないクセ。

  5. 【解説】スティーブ・ジョブズも重視したリベラルアーツって何だろう?

  6. 「役立つ」より「面白い」の視点

  7. 【環境が人を育てる】読み聞かせの効果は理解力に表れる。

  8. 【読み解く】小学生向けのオンラインの習い事・学習塾・教室の選び方。多くの人が誤解している肝心なこと。

  9. 【日経新聞より】アクティブラーニングを導入したのに「受け身」な生徒が増えてしまうの!?

  10. 人口減により遂に偏差値時代が終幕。これからの入試とあるべき幼少期教育について。

  1. 「好奇心を起点に、主体的に学び、深める」これは一種の「技術」である。

  2. 教育における「3つの要素」を知ろう。

  3. 【セレンディピティー】偶然の発見には理由がある。

  4. プチ探☆マンガ『ソルト ルアー フィッシング』編

  5. 問われるのは「問う力」。簡単に納得しないクセ。

  6. プチ探☆マンガ『月の模様』編

  7. 「放流で魚が減る」をクリティカルに考えよう。

  8. プチ探☆マンガ(春の七草-完結編)

  9. 【解説】スティーブ・ジョブズも重視したリベラルアーツって何だろう?

  10. プチ探☆マンガ(春の七草-③)

スローラーニング特集

  1. 「好奇心を起点に、主体的に学び、深める」これは一種の「技術」である。

  2. 教育における「3つの要素」を知ろう。

  3. 【セレンディピティー】偶然の発見には理由がある。

  4. プロセスをしっかり踏むこと。それが成長のロジック。【塾長の想い】

  5. 「のびてく」で身に付くアナロジー思考について

  6. 科目横断的な探究学習と科目学習をどのようにリンクさせていくのかについて、具体例で説明します。

  7. ずっと伸び続ける方法(スローラーニングで好奇心を育てる)

  8. スローラーニング誕生の背景

探究カリキュラムの一例

  1. 【フィールドワーク】石や鉱石を探そう!何が分かるかな?

  2. オオカミ再導入を考える。(豊かな森と生態系の回復を目指して)

  3. 戦争と平和について考えてみよう。

  4. 自分の好きな生き物を魅力的にプレゼンしてみよう!

  5. 論説文や随筆分を構造的に整理してみよう!

  6. 【知恵トレ】自分で規則や法則を作り「知恵」で解いてみよう!

  7. 「形」の仕組みを体感的・論理的に理解しよう!

  8. オノマトペを通して読解力を高めよう!

  9. 観察を通して地球の成り立ちと自然現象を結びつけよう!

  10. 世界の宗教と人々の生活について調べてみよう!