今回は2018年度の灘中学校の算数1日目で出題された文章題の問題です。
問題(2018年度、灘中学校の算数1日目)
りんごが( 1 )個、オレンジが( 2 )個あります。りんご2個とオレンジ3個のセットで箱づめすると、オレンジはちょうど使い切りますがりんごは8個余ります。りんご3個とオレンジ4個のセットで箱づめすると、りんごはちょうど使い切りますがオレンジは8個余ります。
りんごの個数( 1 )個 、 オレンジの個数( 2 )個 を求めなさい。
学習noteの進め方
まずは目安時間の間、「クリティカルシンキングのトレーニング手順」に沿って考えてください。慣れないかもしれませんが、いつも通りには解かず、必ず思考の手順を守ってください。(※時間に余裕があれば目安時間で区切らず、1時間程度考え続けてもOKです。ただし、完全にお手上げ状態で何も思いつかないのであれば無闇に延長せず、そこで切り上げてください。)
その後(解き終えたら、または目安時間が経過したら)、下にスクロールして解説(思考の例)をじっくり読んでください。
ここでは正解か不正解かが重要なのではなく、問題文をどのように紐解いていくかの目の付けどころと思考の道順が重要であって、そこ(クリティカルシンキング)を鍛えることが今回の目的です。
クリティカルシンキングを習得すれば初見の難問に対応できるようになります。頑張りましょう!
クリティカルシンキングのトレーニング手順(批判的思考)
- 1
目的は何かを常に意識する。
(何を問われているのか?どんな理解を試されているのか?など題意を見抜く。)- 2
前提条件、置かれた環境に合わせて考える。
(思い込みや思考の偏りを排除し、客観的に情報を整理•分析する。)- 3
目的を踏まえたうえで、「考える枠組み」を考える。
(どんな項目について考えればゴールに到着するかの見当をつける。)- 4
構造的にアプローチする。
(抜け•漏れ•ダブりを防ぎ、原因と結果の関係に注目し、理屈の構造を明らかにする。)- 5
問い続ける。
(出た結論に対して「なぜ?」「だから?」「本当に?」と問い続けて見落としや新たな発見につなげる。)
クリティカルシンキングの例(解説)
1.目的は何かを常に意識する。
(何を問われているのか?どんな理解を試されているのか?など題意を見抜く。)
- この少ない条件から答えが出るのは何故か?
- 先ずはどういう構造になっているのかを整理して理解してみよう。
このように、いきなり解き始めるのではなく、まずは客観的に題意の理解に集中することが大切です。
2.前提条件、置かれた環境に合わせて考える。
(思い込みや思考の偏りを排除し、客観的に情報を整理•分析する。)
- りんごもオレンジも個数に変化はない。
- セットの個数を変化させることで余り方が変わる。
- 2種類の条件(セットと余り)が示されている。
ここでは思い込を排除し、事実だけを書き入れて整理することが大切です。
3.目的を踏まえたうえで、「考える枠組み」を考える。
(どんな項目について考えればゴールに到着するかの見当をつける。)
- 最小公倍数などに注目し、実現できる数字だけに絞り込んでいく方法もあるが、条件が少なすぎてやり辛い。(優先度下げる)
- つるかめ算的に2つの条件の差異から絞り込んでいく方法もあるが、条件が少なすぎてやり辛い。(優先度下げる)
- 与えられた条件が少ないので、これは構造的に2種類の条件をシンプルに比較すれば見えるかもしれない。(この方向で考えてみよう。)
このように、ここでは3つの方針が見えるが、それぞれの方針の可能性を更に追求し、どちらの方針を優先するかを決めよう。
4.構造的にアプローチする。
(抜け•漏れ•ダブりを防ぎ、原因と結果の関係に注目し、理屈の構造を明らかにする。)
- りんご2個とオレンジ3個で1セットなので、全体も2:3の「関係」が維持される。そこに余りのりんご8個がある。
- りんご3個とオレンジ4個で1セットなので、全体も3:4の「関係」が維持される。そこに余りのオレンジ8個がある。
→お! 余りの8個という実数を活用して「①」と「❶」の関係が2つ表現できるので、これは解ける!
5.問い続ける。
(出た結論に対して「なぜ?」「だから?」「本当に?」と問い続けて見落としや新たな発見につなげる。)
少ない条件 = シンプルに構造化する これを徹底するだけ。
これがクリティカル思考による解法です。数的に解答しようとすると案外ハマってしまうこともあります。どこの関係に注目すれば良いのかについて、冷静に考えるようにしましょう。
解答
りんごの比較より ② + 8 = ❸
オレンジの比較より ① - 8 = ❶ + 8
① = ❶ + 16
これをりんごの比較の式にあてはめると、
❷ + 32 + 8 = ❸
❶ = 40
よって、
(1)りんご: 40×3 = 120個
(2)オレンジ: 40×4 + 8 = 168個
以上。
解答に必要となる前提知識
- 必要な前提知識
- 難易度
- 四則計算
- ★☆☆☆☆
- 数の比較
- ★☆☆☆☆
この問題から学んだこと
- あるものを複数の条件で表現できるとき、かつ、何か実数が1つ含まれているとき、構造的に上手く比較できる場合が多い。
- 与えられた条件が少ない時は計算や数論的な絞り込みではなく、構造的にアプローチする視点を持とう。
- (注意)
「余りがあると比で比較できないので、そういう時は余りを足して比較する。」というテクニックを活用しても解けるが、出題の意図はそこにないと思われる。