今回は「のびてく」との類似点が多かった新聞記事をご紹介したいと思います。
【類似点】
- 毎週のレッスンで個別ディスカッションを行い、面白いと思う心や感性を大切にしている。
- 即効性のある知識よりも、必要な技術や知識を自力で習得できることを目指している。
- アナロジー思考(類推、応用、適用)の土台作りを意識している。
チーム池上が行く!(日本経済新聞)
兵庫県の関西学院大学で行われた集中講座「科学技術と現代社会」では、選抜された50名の学生が12冊の課題図書を読み、教室で池上さんを交えてディスカッションを行ったそうです。
以下、記事の抜粋です。
最初の1冊として選んだのが「未来の科学者たちへ」です。(※ノーベル生理学・医学賞を受賞した東京工業大学の大隈良典栄教授と、大隈氏の長年の友人で科学者、歌人でもある京都大学の永田和宏名誉教授による共著)
本の中で学生たちの心に刺さった言葉がありました。「役に立たなくてもよい面白いと思うことを研究しなさい」
学生A:「役に立つ」の呪縛とあったが、本当にそれにとらわれている。僕もそう。
学生B:大学の制度として役に立つことが優先されすぎてしまっている。
学生C:趣味の延長で科学があるとクリエイティブな発想が出てくるのかなと思った。
この学生たちの意見を聞き、池上さんが思い出したことが
米マサチューセッツ工科大(MIT)に視察に行った際、あるMITの先生が、「学生には最先端のことなど教えない。むしろ社会に出てから最先端の技術や知識を作り出す力をつける必要がある」と述べていたことです。
最先端の技術というのは4年くらいで陳腐化してしまう。卒業する頃に役立たなくなっていることを教えても意味はないというのです。
すぐに役に立つことばかり勉強しているとすぐに役にたたなくなる。一見、何の役に立つのかわからないことを学んでおくことが、後になって実を結ぶことがあり得るということなのです。
私が言うのも何ですが、本当にその通りだと思います。
そして、この科学と社会と面白さが実際につながる実例・好例をご紹介します。
日本経済新聞 サイエンス 生物に学ぶ
日曜日の日経新聞のこのシリーズ面白いですよね。
研究者の感性や好奇心、そして各種メカニズムに対する深く広い理解があるからこそ、異分野同士を繋げて「類推」でき、このような「発見」をすることができるのでしょう。
SDGs目標達成にもバイオミメティクス(生物模倣)/バイオミミクリーは存在感を持つような気がしますし、何より「生物に学ぶプロセスそのもの」が子どもたちの教育として非常に有効なものだと感じます。
身近なことの観察から、たった一つでも「不思議だな」というものが見つけられたとしたら、それはとてつもない才能でしょう。
不思議なものをみつけることって、そうそう出来ませんから。
大学の研究のような高度な成果まで出なくても良いんです。
ありきたりのことにでも、自分で感じて、調べて、結論づける。それが既知の事実であっても良いのです。
こういう学びのプロセスを経験した子どもたちは確実に強く賢くなるはずです。
バイオミメティクスの研究者にならずとも、探究的に楽しく学んでいける地力(自力)があるのですから、どんな分野でも花が開くと思います。
※過去記事も面白いですよね。フナムシがエラ呼吸だったとは知りませんでした。
創造にはスローラーニングが必要
【クリエイティブとは】
1.想像力を使うこと
2.独創的であること
3.知識と技術を活用できること
4.目的を満たせること
5.自身でチェックできること1999年、イギリスのNACCCE(National Advisory Committee on Creative Cultural Education)が発表したレポートより引用
ジェームス・ウェブ・ヤングは「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせだ」と言いました。
スティーブ・ジョブズは「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」に立ち価値を創造してきました。
バイオミメティクスでは生物学と工学の交点を探っていきます。(アナロジー思考)
ものごとの交差点には創造につながる本質や新しい価値があるのです。
何と何がどこで交わるかは誰も教えてはくれません。自分で気づかないといけないのです。
スローラーニング(アクティブラーニング)
A地点からB地点へ高速道路で移動するような学習(知識重視のファストラーニング)では、交点は見えてきませんね。
A地点から歩き立ち止まりながら、繊細に感じ、深く考えることを繰り返すことが大切、つまりスローラーニング(じっくり深く)が基本になってくるのです。
【スローラーニングとは?】よく勘違いされるのですが、スローラーニングとは、のんびり浅く学ぶのではありません。表面的な知識習得で満足せず、じっくり・深く・濃く学ぶこと、そしてその過程そのものを楽しむ(味わう)ことを指します。工場で大量生産された規格食品のファストフードに対して、その土地の食文化や食材を見直し旬の食材や調理を楽しもうというスローフードと同じ考え方のものです。
スローラーニングでは、個別ディスカッションで物事の見方や考え方や感じ方を広げてもらい、その想いを基点に自学(調査・まとめ)することを繰り返します。
好奇心が膨らむほどに脱線(広がる)しますが、知りたい学びたい方向に道草をくうわけなので、これほど素晴らしい学習はありません。
やればやる程どんどん感じる力が増し、自分で歩く力(調べ考える力)も鍛えられ、考える深さや速さも上がってきます。良い意味で雪だるま式に成長していきます。
ファストラーニングでは到底追いつけない程に「深く・広く・濃く」学ぶだけでなく、結果として早く・速く学んでいくことにもなるのです。
そして、さまざまな角度から考える経験によって交点に気づくことができるようになっていくのです。
この交点はコツと言い換えることもできますね。コツを見つけるのが上手になれば、新しいことに挑戦することに抵抗はなくなっていきます。
「役立つ」より「面白い」の視点を持ち、じっくり学ぶこと自体を楽しむ。
大学生だけでなく、幼少期(小学生)からその土台をつくっていくことが本当に大切だと思います。
過去参考:生き物に学ぶシリーズの記事
以前に書いたアナロジー思考に関するコラム
お時間ありましたら、是非ご一読くださいませ。
https://nobiteku.com/biomimetics/
(1) ハサミの硬さは鋼鉄級 2022-10-16
沖縄に生息するヤシガニは強力なハサミを持っている。挟む力は体重の90倍を超える約360キログラムで、ライオンのかむ力に匹敵するという。
ハサミを詳しく解析すると、外側は鋼鉄級の硬さだった。石灰化した薄い板が100層ほどあり、ねじれながら重なることで一気に壊れないようになっていた。内側は細かい穴があいた構造で、軽く柔らかいクッションの…
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65139050U2A011C2MY1000/
(2) 羽ばたく小型ドローン 2022-10-23
空中でとどまって花の蜜を吸うハチドリのように羽ばたいて飛ぶドローン(小型無人機)の開発が進んでいる。長崎大学の永井弘人准教授は「小型でも安定した飛行を実現するために、鳥や虫からヒントを得た」と話す。
通常のドローンはプロペラを使うが、開発中の機体は2枚の翼をもつ。ハチなどの骨格を参考にして翼の硬さなどを調整し、翼が自律的に変形して風を効率よく送る。尻尾の部分につけた電…
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65366400R21C22A0MY1000/
(3) 脚の微小突起で水輸送 2022-10-30
海岸沿いに生息するフナムシは、泳げないのにエラ呼吸をする。脚から吸い上げた海水をエラに染み込ませて生きている。海水を運んでいるのは、脚の表面にある数十マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの細かい突起だ。
プラスチックや金属といった材料の表面に細かい突起を作れば、密度や向きなどを調整するだけで水を狙った方向に自在に動かせる。
研究チームの石井大佑名古屋工業大…
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65534740Y2A021C2MY1000/
(4) セミの羽、菌刺す剣山 2022-11-6
セミの透明な羽には、雑菌を突き刺す剣山がある。規則正しく並んだナノサイズの突起が菌の膜を壊す。引き伸ばされた菌は分裂と勘違いして、自らを切断する酵素も出しているようだ。水をはじいて雨でも飛びやすくしたり、光の反射を抑えて敵から身を隠したり、様々な役割が知られていた。抗菌作用はまだ見つかったばかりだ。
セミの羽の構造をまねた材料は、2時間ほどで表面…
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65753470U2A101C2MY1000/