PISA(国際的な学習到達度テスト。加盟国は2018年は世界79カ国。)の調査結果で読解力が何年も上位であるフィンランドの教育は世界一と言われています。何度かフィンランドの教育についての本を読んだことはあったのですが、今回はフィンランドの国語の教科書(日本版)を読んでみました。実際にフィンランドで生活をしたわけでもなく、教育の効果を肌身で感じたわけではありません。その教育が「そのまま」日本に合うとも限りませんが、「なるほど」と感じたことをコラムにしてみました。
答えのない教科書
なるほど、と思ったのは、フィンランドの教科書には設問に対しての答えがついていないことです。教科書の学習目的が、「正解すること」ではなく「考えること」にあるのでしょう。先生は生徒自身が出した答えに対して「どうしてそのように考えたのか」という根拠を重視さてれいるようです。生徒は根拠の可能性となる全ての情報を集め、精査し自分で納得できる答えを出すことを学びます。また、自分で考えたことを相手に正確に伝える、という表現力、コミュニケーション力も重視しています。国際基準の読解力には、情報を自分で咀嚼し、相手の環境に合わせて伝えるといった表現力やコミュニケーション力も含まれています。そういったこともフィンランドでは全科目を通じて小学生時代から学んでいくそうです。(「のびてく」の学習方法と同じですね^^)
教育の目的
フィンランドは実社会に必要な能力を子供に身につけさせる、という目的で抜本的に教育体制を大改造しました。その成果がPISAの調査結果にもしっかり現れました。日本も「ゆとり教育」を推進してきたわけですが、残念ながらフィンランドのように成果はでず、逆にPISAの調査結果では読解力は右肩下がりでした。
結果の出たフィンランドと結果が出なかった日本、どこに違いがあったのでしょうか。
私が考えるに、ですが、日本は教育の目的が「受験」であることが大きいと思います。公平が重視される日本では採点基準が明確である必要があり、「答えのある問い」、つまり「知識を問うもの」が試験の大半を占めることとなっています。知識を詰め込み、暗記させる教育になりがちなのも必然ですね。思考力や判断力が大事だと言われても、結局「(知識を問う)受験」が壁となって後回しになってきたように思います。もちろん、勉強することは大事ですし、必要な知識は入れる必要があります。しかし学習が偏りすぎている(行き過ぎている)のが問題なのでしょう。思考力や判断力もバランス良く人間の成長に合わせて意識的に訓練していく必要があるのではないかと思います。
ちなみにフィンランドの大学受験はどうなってるのかというと、「大学入学資格試験」と、「大学入試」があるようです。「大学入学資格試験」(高校卒業するための試験)は3週間1日おきにテストがあり、1科目6時間。最低4科目で合格しないといけないそうです。「大学入試」は志望学部の専門書が指定され、その範囲での試験。
「大学入学資格試験」(高校卒業するための試験)後は進路が様々で、アルバイトしてお金を貯めてから大学へという方や、男性なら兵役義務を果たしてから大学という方、まずは旅行!という方も。自分で自分の道を作っていかれるのですね。「自分の人生をどのように過ごしたいのか」「何をして社会にどう貢献していきたいのか」を考えて生きていけるよう「実社会に必要な能力を子供に身につけさる」ことを目的とした教育体制なんですね。
日本も変わっていく
こう見ると、日本が教育において遅れをとっているように見えますが、どうでしょうか。日本の人口は1億2千万人ぐらいです。フィンランドは550万人。ちょうど兵庫県の人口と同じぐらいらしいです。そう思うと、地政学や政治、文化、国民性もあると思いますが、日本はすぐに大きくは変われないのかもしれませんね。大きくは変われないかもしれませんが、今は徐々に変化している最中です。去年の大学入試では「思考力」を問う問題が全科目通じて出されました。文科省の教育目標も「生きる力 学びの、その先へ」。そして学習指導要領も徐々に改訂されています。日本は、少しずつ変わってきているようです。今後10年で、ごろっと変わってるかもしれませんね。
さいごに
元来、子どもは知りたがりです。知りたがりですが、なぜか、それが逆転して受け身になって「教えてもらえる」ことが当たり前になっています。昔(大量生産時代)の教育がそう仕向けていたのでしょう。もうすでにAI時代です。言われたことをする受身の人間と主体的に考えられる人間とで職業が二極化していくと言われていますね。
「これが正解」という答えがなくても、自分で試行錯誤を繰り返しながら、自分の中で納得できる根拠を掴み、周りからの新しい視点を拒否することなく素直に吟味し、自分の考え(答え)を持つことができるようになれるといいなと思います。付け加えると、国際基準の読解力はそれに表現力やコミュニケーション力がついてきます。それにはじっくりと時間がかかります。
のびてくの授業でも受講してすぐに読解力がついたり、思考力がついたりすることはありません。しかし、日々の積み重ねで、少しづつ変化してくる生徒さんを見ていると、この積み重ねが将来大きな差となるんだろうな、と思います。こういった教育が広まっていくといいなと思いました。