こんにちは、塾長のnobi先生です。
昨日11/12(日)の日経新聞「科学の扉」を読み、久しぶりにコラムを書きたくなりましたので書いてみます。
1.見ているのと発見は違う
記事の冒頭に「見ているのと発見は違う」という言葉が出てきますが、ここに「教育の秘訣」がギュッと凝縮されていると感じています。
「のびてく」が「スローラーニング」を提唱している理由もここにありますので、経験談も交えつつお話してみたいと思います。
記事中にある特徴的な言葉を抜粋してみます。
- 見ているのと発見は違う。
- 飯島氏は過去の取材で「自分より前にナノチューブを見ていた人はたくさんいただろう」と話していた。
- しかし、分子構造を特定して科学的に新規の分子だと明らかにしたのは飯島氏だ。
- 何がこの差を生んだのか。「発見の準備をしていたからだ」と分析する。
- 要因はいくつかある。ひとつは電子顕微鏡での観察技術を向上させてきたこと。もう一つは、様々な炭素材料を研究して経験が豊富だったこと。
- より大きいのは、普通なら見過ごしてしまう出来事を見逃さず、隠れている大きな意味を見出す力だ。「セレンディピティー」という言葉がよく使われる。
- 飯島氏には、痛い経験がある。60個の炭素原子がサッカーボール状に並んだ「フラーレン(C60)」は96年にノーベル化学賞の受賞テーマとなった。飯島氏は受賞した 3人よりも5年も前に電子顕微鏡で観察していながら、見過ごしていた。
- 「幸運は用意された心のみに宿る」。試行錯誤や努力を重ねて技能を磨いていなければ、チャンスを引き寄せて掴むことはできないと言う格言だ。
- 常識に疑問を持ち、先入観なく研究を続け、 導電性高分子の開発につなげた。
- 同じ画像やデータを見ていても、疑問に思わなければ発見にはつながらない。
- こうした科学者の姿勢は新たな製品や事業などビジネスの世界でも通用するのではないか。
〜日経新聞サイエンス(編集委員 青木慎一) より抜粋〜
子どもたちを指導する立場から皆様にお伝えしたいのは、
- 発見(ユーレカ)につながる疑問を持つにも、それなりの準備(基礎知識、理論)や経験が不可欠である。
- 普通に暮らして、普通に勉強しているだけではセレンディピティーは身に付かず、幸運を呼び込むことはできない。
- 疑問を持つことは簡単ではない。誰でも価値のある情報に対する感性・感度が鈍い所からスタートするもの。
- 沢山の失敗や苦労をした経験が土台にあるからこそ、そのありがたみ、違い、効果などを強く実感することができる。
ということです。
ちゃんと順序を踏んで磨いてあげないと光らないのです。
2.レッスンでの指導の例
さて、ほんの一例ですが、偶然の発見を必然に変えるためのレッスン指導を紹介させて頂きます。
情報を立体的に並べ変え比較し、楽しみながら頭を立体的に使う訓練を行っています。
596個もの「どんぐり」を採集して分類してくれたお子様
どんぐりにも色々な種類があります。そして、その背景には生態系、生存戦略、気候変動など「いくつもの大きな意味」が隠されていることが感じられます。それを発見してもらえるよう、レッスンでは投げかけて行きます。それにしても、素晴らしい好奇心、根気、実行力ですね!
夏の雲を1ヶ月観察してくれたお子様
同じ雲は存在せず、日々姿形を変えて行きます。そのメカニズムを勉強しつつ、ある視点を取り入れて観察を続けてもらうように投げかけて行きます。そうすると、段々と見えないものが見えてくるのです。発想を飛ばすこともできるようになって行きます。また、純粋に美しいとか、カッコイイとか、穏やかだとか、そういう感性も磨かれていきますね。
色々な手作りスイーツに挑戦・研究してくれているお子様
材料だけでなく、手順やタイミングによっても大きく味が変化することを「実食」によって実感することができます。単に作業やコツを教えてしまうのではなく、本人に任せて何を意図して作業をしているのか、どういう心を共有・共感していきます。一度だけでなく、何度も継続して作っていると、その違いにも関心(疑問)の目が及んでいきます。準備、計画、段取り、確認、調整、改善など、様々な要素を含んでいることも良い経験になりますね。
学びはオンラインのセッション中だけで完結するものではありません。
親御様の関心や応援、そして機会作りのご協力・サポートも頂きながら、疑問を持つために必要な準備である「知識・理論・技能・感性」を徐々に身につけていってくれるのだと考えています。
3.幸運は用意された心のみに宿る
幸運は用意された心のみに宿る。
試行錯誤や努力を重ねて技能を磨いていなければ、チャンスを引き寄せて掴むことはできないと言う格言だ。
ニュートンのリンゴの話に代表されるように、普段からそういう準備をしているからこそ、偶然を必然に変えることができるのだと思います。
一方、レッスンなどで子どもたちと接していると、表面的な知識は沢山インプットされているのですが、「隠れている大きな意味」の存在に興味が無く、「当たり前」「普通」「もう知っている」という態度(準備)が癖づいてしまっているなと感じることもあります。
このままでは疑問が湧かず、発見には至りません。
それでも素直な子どもたちは、ちょっとしたキッカケ一つで、「隠れている大きな意味」の存在に気づき、探し当てることを楽しみ始めてくれます。
そのようにして自発的な学びの軌道に乗ってしまうと、後はグルグルと螺旋状に吸収し、成長していってくれるようになって行きます。
それぞれ、どんな分野で、どんなタイミングでそのスイッチが押されるのかは違っていますが、スローラーニングを粘り強く継続していると必ずスイッチが入って行きます。
「のびてく」では、普通なら見過ごしてしまう出来事を見逃さず、隠れている大きな意味を見出す力を身につけてもらえるよう、良質な指導を心がけております。