今回は2018年度の灘中学校の算数1日目で出題された数論の問題です。
問題(2018年度、灘中学校の算数1日目)
3を8個かけてできる数3×3×3×3×3×3×3×3、すなわち6561の約数のうち、4で割ると1余るものは、1を含めて( ア )個あります。
また、30を8個かけてできる数30×30×30×30×30×30×30×30の約数のうち、4で割ると1余るものは、1を含めて( イ )個あります。
学習noteの進め方
まずは目安時間の間、「クリティカルシンキングのトレーニング手順」に沿って考えてください。慣れないかもしれませんが、いつも通りには解かず、必ず思考の手順を守ってください。(※時間に余裕があれば目安時間で区切らず、1時間程度考え続けてもOKです。ただし、完全にお手上げ状態で何も思いつかないのであれば無闇に延長せず、そこで切り上げてください。)
その後(解き終えたら、または目安時間が経過したら)、下にスクロールして解説(思考の例)をじっくり読んでください。
ここでは正解か不正解かが重要なのではなく、問題文をどのように紐解いていくかの目の付けどころと思考の道順が重要であって、そこ(クリティカルシンキング)を鍛えることが今回の目的です。
クリティカルシンキングを習得すれば初見の難問に対応できるようになります。頑張りましょう!
クリティカルシンキングのトレーニング手順(批判的思考)
- 1
目的は何かを常に意識する。
(何を問われているのか?どんな理解を試されているのか?など題意を見抜く。)- 2
前提条件、置かれた環境に合わせて考える。
(思い込みや思考の偏りを排除し、客観的に情報を整理•分析する。)- 3
目的を踏まえたうえで、「考える枠組み」を考える。
(どんな項目について考えればゴールに到着するかの見当をつける。)- 4
構造的にアプローチする。
(抜け•漏れ•ダブりを防ぎ、原因と結果の関係に注目し、理屈の構造を明らかにする。)- 5
問い続ける。
(出た結論に対して「なぜ?」「だから?」「本当に?」と問い続けて見落としや新たな発見につなげる。)
クリティカルシンキングの例(解説)
1.目的は何かを常に意識する。
(何を問われているのか?どんな理解を試されているのか?など題意を見抜く。)
- 本文に「…すなわち6561の約数のうち…」と書かれている部分に注目する。
- 「すなわち」「約数」という言葉に考え方の方向性が表れていて、これがヒントだな!
このように、いきなり解き始めるのではなく、まずは客観的に題意の理解に集中することが大切です。
2.前提条件、置かれた環境に合わせて考える。
(思い込みや思考の偏りを排除し、客観的に情報を整理•分析する。)
- 約数とは、該当の数を素因数分解し、その素因数の全ての組み合わで表現できる数のことである。(これが前提条件になる。)
- (ア)は3の8個の組み合わせが、調べるべき対象となる約数であると分かる。
- (イ)は30の8個の組み合わせ、つまり、「2の8個」と「3の8個」と「5の8個」の全ての組み合わせが調べるべき対象となる約数であると分かる。
- あとは、「4で割って1余る」という最終条件をどのように工夫して考えるかである。
ここでは思い込を排除し、事実だけを書き入れて整理することが大切です。
3.目的を踏まえたうえで、「考える枠組み」を考える。
(どんな項目について考えればゴールに到着するかの見当をつける。)
- まずは書き出しでも何とかなりそうな(ア)に着手する。
- ここを書き出しだけなく、論理的、構造的な裏付けを伴って理解できれば(イ)も解けるはず。
- 3をかける回数が増え、約数が大きくなっていく過程で余りがどんな規則で変化していくかを把握してみよう。
4.構造的にアプローチする。
(抜け•漏れ•ダブりを防ぎ、原因と結果の関係に注目し、理屈の構造を明らかにする。)
- 赤丸が余りを示す。
- 以下の図のように、「4の倍数部分」と「余り」を分けて考えると、
→4の倍数部分には何をかけても4で割り切れる。
→余り部分は図のように3をかけた分増加し、再度4で割って余りが出る。これが繰り返される。 - 余り部分にだけ注目して行けば良いことが分かった。
- つまり、余りの規則性が論理的、構造的に把握できた!
- 続いて、上記の構造を理解したうえで、全体を表にまとめてみよう。(※問題文に1を含めてとあるので、1も表中に記載する。)
3をかける回数(全ての約数の列挙) | 0回 | 1回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回 | 6回 | 7回 | 8回 |
余り | 1 | 3 | 1 | 3 | 1 | 3 | 1 | 3 | 1 |
4で割って1余る数 | 1個 | 0個 | 1個 | 0個 | 1個 | 0個 | 1個 | 0個 | 1個 |
よって、1を含めて(ア)は5個となる。
- (イ)について、上記(ア)を理論的、構造的に応用したい。
- 30=2×3×5 なので、
(a)2だけで構成される約数
(b)3だけで構成される約数
(c)5だけで構成される約数
(d)2と3で構成される約数
(e)2と5で構成される約数
(f)3と5で構成される約数
(g)2と3と5で構成される約数
このa〜gの7パターンが考えられる。 - 「4で割って1余る」ことを考えると・・・
→ ×2 の場合は偶数になるので、相手が何であっても「余り1(奇数)」になることはない。(つまり、考えなくて良いということ。)
→ ×5 の場合は×3と同様に考えると以下の図のようになる。
- ×5の場合について全体を表にまとめてみよう。(※問題文に1を含めてとあるので、1も表中に記載してある。×3の表と重なるので注意すること。)
5をかける回数(全ての約数の列挙) | 0回 | 1回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回 | 6回 | 7回 | 8回 |
余り | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
4で割って1余る数 | 1個 | 1個 | 1個 | 1個 | 1個 | 1個 | 1個 | 1個 | 1個 |
【補足】
ちなみに、上記の構造図から以外にも数的なアプローチも可能。4の約数の特徴は下2けたが4の倍数であれば良い。(※「100 = 25×4」なので3けた以上は全て表現できる。)よって、下2ケタだけ確認すれば良い。(下2けたは常に25となるので、全て余り1となる。)
よって、×5の場合は1を除くと8個となる。
- 残るは 「(f)3と5で構成される約数」 だけである。
- ×3は(1を除き)4個であり、×5は(1を除き)8個なので、3と5の全ての組み合わせは 4×8=32個 となる。
よって、
- 3だけで構成される約数: 4個
- 5だけで構成される約数: 8個
- 3と5で構成される約数: 32個
- 1を含めて :1個
(イ) 合計 45個
5.問い続ける。
(出た結論に対して「なぜ?」「だから?」「本当に?」と問い続けて見落としや新たな発見につなげる。)
- 構造的な理解は上記で間違いない。(余り部分にだけ注目して考えると良い。)
- ×2を使うと必ず偶数になるので考えなくて良い。(念のための確認)
- となると、3だけで構成される約数、5だけで構成される約数、3と5の組み合わせで構成される約数、そして1 を含めることで間違いない。
- OK!
解答
上記の解説より、
1
3×3
3×3×3×3
3×3×3×3×3×3
3×3×3×3×3×3×3×3
1を含めて(ア)は5個となる。
同じく、上記の解説より
- 3だけで構成される約数: 4個
- 5だけで構成される約数: 8個
- 3と5で構成される約数: 32個
- 1を含めて :1個
(イ) 合計 45個
以上。
解答に必要となる前提知識
- 必要な前提知識
- 難易度
- 素因数分解、約数
- ★☆☆☆☆
- 場合の数(組み合わせ)
- ★☆☆☆☆
この問題から学んだこと
- 問題文から前提条件を明確にする。
- 考える範囲を具体的に列挙し、絞り込む。
- 考えなくて良い範囲を絞り込む。
- 規則や構造を意識する。