今回は2018年度の灘中学校の算数1日目で出題された計算の問題です。なるべく工夫して解いてみましょう。
学習noteの進め方
まずは目安時間の間、「クリティカルシンキングのトレーニング手順」に沿って考えてください。慣れないかもしれませんが、いつも通りには解かず、必ず思考の手順を守ってください。(※時間に余裕があれば目安時間で区切らず、1時間程度考え続けてもOKです。ただし、完全にお手上げ状態で何も思いつかないのであれば無闇に延長せず、そこで切り上げてください。)
その後(解き終えたら、または目安時間が経過したら)、下にスクロールして解説(思考の例)をじっくり読んでください。
ここでは正解か不正解かが重要なのではなく、問題文をどのように紐解いていくかの目の付けどころと思考の道順が重要であって、そこ(クリティカルシンキング)を鍛えることが今回の目的です。
クリティカルシンキングを習得すれば初見の難問に対応できるようになります。頑張りましょう!
クリティカルシンキングのトレーニング手順(批判的思考)
- 1
目的は何かを常に意識する。
(何を問われているのか?どんな理解を試されているのか?など題意を見抜く。)- 2
前提条件、置かれた環境に合わせて考える。
(思い込みや思考の偏りを排除し、客観的に情報を整理•分析する。)- 3
目的を踏まえたうえで、「考える枠組み」を考える。
(どんな項目について考えればゴールに到着するかの見当をつける。)- 4
構造的にアプローチする。
(抜け•漏れ•ダブりを防ぎ、原因と結果の関係に注目し、理屈の構造を明らかにする。)- 5
問い続ける。
(出た結論に対して「なぜ?」「だから?」「本当に?」と問い続けて見落としや新たな発見につなげる。)
クリティカルシンキングの例(解説)
1.目的は何かを常に意識する。
(何を問われているのか?どんな理解を試されているのか?など題意を見抜く。)
- 普通に計算しても解けるが、時間がかかるので工夫できるはず。(※入試中ならゴリ押しで解くのも一つの手。)
このように、いきなり解き始めるのではなく、まずは客観的に題意の理解に集中することが大切です。
2.前提条件、置かれた環境に合わせて考える。
(思い込みや思考の偏りを排除し、客観的に情報を整理•分析する。)
- 共通の約数でくくれるかもしれないので、ひとまず左辺の分母を素因数分解をして考えてみよう。
→ 左辺= (3 / 2×5)+(2 / 5×7)+(4 / 7×11)+(2 / 11×13)
ここでは思い込を排除し、事実だけを書き入れて整理することが大切です。
3.目的を踏まえたうえで、「考える枠組み」を考える。
(どんな項目について考えればゴールに到着するかの見当をつける。)
- どう工夫すれば簡単に計算できそうか?に絞って考える。
左辺= (3 / 2×5)+(2 / 5×7)+(4 / 7×11)+(2 / 11×13) - これを普通に通分するのは大変過ぎる。おそらく4つの分母を全て通分せずに済む方法があるはず。
4.構造的にアプローチする。
(抜け•漏れ•ダブりを防ぎ、原因と結果の関係に注目し、理屈の構造を明らかにする。)
左辺= (3 / 2×5)+(2 / 5×7)+(4 / 7×11)+(2 / 11×13)
- 客観的に分母の特徴を見ると、素因数がひとつずつ共通している。
- 各素因数の差が分子と同じである。
- これに何か意味はあるのか?
5.問い続ける。
(出た結論に対して「なぜ?」「だから?」「本当に?」と問い続けて見落としや新たな発見につなげる。)
- あ!部分分数分解だ!!!(※これは部分分数分解の知識が無いと思いつくのは難しい。)
解答
左辺
= (3 / 2×5)+(2 / 5×7)+(4 / 7×11)+(2 / 11×13)
= (1/2 - 1/5) + (1/5 - 1/7) + (1/7 - 1/11) + (1/11 - 1/13)
= 1/2 - 1/13
= 11/26
右辺のカッコ内をAとおくと、
11/26 = 30 ÷ A
A = 26×30 / 11
求める数(□)をBとおくと、
76 - B ÷ 11/7 = 26×30 / 11
ゆえに、
B = 8
以上。
解答に必要となる前提知識
- 必要な前提知識
- 難易度
- 分数の計算
- ★☆☆☆☆
- 部分分解分数
- ★★★★★
この問題から学んだこと
- 分子が1の場合は分母の素因数が連続していると部分分数分解が活用できる。
- 同様に、「分母の素因数の差」と「分子」が同じ場合も部分分数分解が活用できる。
- ただし、知っていれば単純ではあるが、前知識なしで部分分数分解の構造を思いつくのは難易度が相当高い。
- そういう意味で、これは知識重視の問いだと位置付けられる。