今回は2018年度の灘中学校の算数1日目で出題された数論の問題です。一見、手がかりが少ないように感じますが、必要な情報はそろっています。切り口をうまく探しましょう。
問題(2018年度、灘中学校の算数1日目)
4桁の整数aと2桁の整数xがあります。aとxをかけると119868になります。また、aの十の位の数と一の位の数をどちらも0に置き換えてできる4桁の数とxをかけると117600になります。このような整数a,xのうち、aが最も大きいものは、a=( ア ),x=( イ )です。
(ア)と(イ)を求めなさい。
学習noteの進め方
まずは目安時間の間、「クリティカルシンキングのトレーニング手順」に沿って考えてください。慣れないかもしれませんが、いつも通りには解かず、必ず思考の手順を守ってください。(※時間に余裕があれば目安時間で区切らず、1時間程度考え続けてもOKです。ただし、完全にお手上げ状態で何も思いつかないのであれば無闇に延長せず、そこで切り上げてください。)
その後(解き終えたら、または目安時間が経過したら)、下にスクロールして解説(思考の例)をじっくり読んでください。
ここでは正解か不正解かが重要なのではなく、問題文をどのように紐解いていくかの目の付けどころと思考の道順が重要であって、そこ(クリティカルシンキング)を鍛えることが今回の目的です。
クリティカルシンキングを習得すれば初見の難問に対応できるようになります。頑張りましょう!
クリティカルシンキングのトレーニング手順(批判的思考)
- 1
目的は何かを常に意識する。
(何を問われているのか?どんな理解を試されているのか?など題意を見抜く。)- 2
前提条件、置かれた環境に合わせて考える。
(思い込みや思考の偏りを排除し、客観的に情報を整理•分析する。)- 3
目的を踏まえたうえで、「考える枠組み」を考える。
(どんな項目について考えればゴールに到着するかの見当をつける。)- 4
構造的にアプローチする。
(抜け•漏れ•ダブりを防ぎ、原因と結果の関係に注目し、理屈の構造を明らかにする。)- 5
問い続ける。
(出た結論に対して「なぜ?」「だから?」「本当に?」と問い続けて見落としや新たな発見につなげる。)
クリティカルシンキングの例(解説)
1.目的は何かを常に意識する。
(何を問われているのか?どんな理解を試されているのか?など題意を見抜く。)
- 0に置き換える前後の比較を活用することは間違いなさそうだ。
- その比較の中で、必ずaとx絞り込めるはずだ。
- その条件や根拠を見落とさないようにしよう。
このように、いきなり解き始めるのではなく、まずは客観的に題意の理解に集中することが大切です。
2.前提条件、置かれた環境に合わせて考える。
(思い込みや思考の偏りを排除し、客観的に情報を整理•分析する。)
- 4桁の数aを、a4a3a2a1と表現し、2桁の数xをX2X1と表現することにする。
- a1 × X1 の下一桁が8だと分かるが、九九の中にも8,18,28,48と4パターンもあるので、ここから順々に絞り込んでいくのは難しいだろう。
- 0に置き換える前後でのそれぞれの掛け算の結果が「119868」と「117600」と分かっている。
- つまり、0に置き換わることで119868-117600 = 2268 が差となる。
- つまり、a2a1 × X2X1 = 2268 である。
- また、下二桁が0になるので、a4a3 × X2X1 = 1176 である。
- あとは、これらの事実をどう活用するかを考えよう。
ここでは思い込を排除し、事実だけを書き入れて整理することが大切です。
3.目的を踏まえたうえで、「考える枠組み」を考える。
(どんな項目について考えればゴールに到着するかの見当をつける。)
- a2a1 × X2X1 = 2268 である。
- a4a3 × X2X1 = 1176 である。
- X2X1が共通していること、そして、掛け算なので素因数分解して絞り込むことができるかもしれない!
- 一度試してみよう!
4.構造的にアプローチする。
(抜け•漏れ•ダブりを防ぎ、原因と結果の関係に注目し、理屈の構造を明らかにする。)
- 2268 = 2×2×3×3×3×3×7
- 1176 = 2×2×2×3×7×7
- X2X1 が共通している、つまり、これは公約数であるということ。
- 最大公約数は2×2×3×7 = 84 である。
- xは2桁なので、84,42,28,21,14,12 の6つに絞り込める。
- 問われているのは4桁の整数aが最も大きい時なので、xは一番小さい方が良い。
- X2X1=12のとき a4a3=98(2桁なのでOK) ,a2a1=189(3桁なのでダメ)
- X2X1=14のとき a4a3=84(2桁なのでOK) ,a2a1=162(3桁なのでダメ)
- X2X1=21のとき a4a3=56(2桁なのでOK) ,a2a1=108(3桁なのでダメ)
- X2X1=28のとき a4a3=42(2桁なのでOK) ,a2a1=81(2桁なのでOK!)
答えが出た!
x=28、
a = 119868÷28 = 4281
5.問い続ける。
(出た結論に対して「なぜ?」「だから?」「本当に?」と問い続けて見落としや新たな発見につなげる。)
- 検算すると、a4a3 = 1176÷28 = 42
- 81×28 = 2268
OK!
解答
上記の解説より、
(ア) x = 28
(イ) a = 4281
以上。
解答に必要となる前提知識
- 必要な前提知識
- 難易度
- 素因数分解、約数
- ★☆☆☆☆
この問題から学んだこと
- 実際に矛盾なく存在しえる数を絞りこむ際に、どの事実から絞り込むのかに集中する。
- 先入観を持たず、過去の類似問題の知識に頼らず、シンプルに問題文の条件を把握する。
- 掛け算、約数、整数、桁数といった、小さな事実を見落とさず、丁寧に活用すること。